11日(木)曇り。新聞・テレビは尖閣ビデオ流出事件一色だ。海保の人間が告発したことをめぐって、この職員を国士扱いする雰囲気が強まっているのは危険だ。本来なら国民が知りたいと思っている権力側の情報を探り、報道するのがマスコミの仕事ではないのか。
その意味では、沖縄の密約問題をすっぱ抜いた毎日新聞の西山記者の事件とは全く性質が違う。あの時はマスコミは西山記者を守り切れずに、逆にスキャンダラスな事件にすり替え権力の横暴を許してしまったばかりか、西山記者個人の記者生命まで奪ってしまった。
この海保の職員は一連の事件の経緯に対する政府の対応に不満を抱いていたことははっきりしているようだ。ならば、自分の職を賭して堂々と主張すべきだ。家族や仲間への迷惑を理由にはっきり言わないところに、私などは政治勢力の介在を疑ってしまう。
だから、今日になっても拍手喝采とはいかない。そもそもこのビデオが国家機密に属するとも思わないし、公開してなんの支障があるのかもわからない。単に政府が中国に気を使い過ぎて、対応を誤っただけの話ではないか。日本外交に理念も信念もない。
今に始まったことではない。日本で白昼堂々金大中(後の大統領)氏がホテルで拉致されたときの対応もそうだった。明白な日本の主権侵害で政府とすれば、先ず原状回復を韓 国に求め、指紋まで残して帰国した大使館の一等書記官の引き渡しを求めるべきだった。
同時期に同じような事件が当時の西ドイツで起きた時、西ドイツ政府は高校断絶までちらつかせて原状回復を迫り、実現した。日本政府はどうしたか。当時の田中内閣は韓国の首相が謝罪に訪れることでうやむやに政治解決を図った。未だに犯人は逮捕されていない。
今も同じことが行われている。中国政府はノーベル平和賞を受賞した劉暁波氏の授賞式に各国政府が代表を送らないよう要請している。それに対し、フランス政府をはじめ、欧米各国は即座に拒否すると同時に中国を非難した。仏国は対中大型商談を結んだばかりだ。
日本はどうかと言えば、管首相は「劉氏釈放が望ましい」前原外相は「適切に判断したい」と煮え切らない。自公政権時代と何も変わらない。ここまで気を使う理由がどうにも理解不能だ。これでは国内のフラストレーションは高まるばかりだ。
外交こそ毅然とした対応が必要だ。商談は商談、主権は主権だ。日本の弱腰外交は対米は勿論、対中だけではない、対露、対韓すべてにおいてそうだ。比較的強気に出るのは、対東南アジアやアフリカではないか。これもまた戦後処理に繋がる話である。
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